子宮筋腫
子宮筋腫は子宮に発生する良性の腫瘍で、30歳以上の女性4~5人に1人の割合で発症するとされています。表面にできた「漿膜下筋腫」、筋肉内にできた「筋層内筋腫」、子宮内膜内にできた「粘膜下筋腫」に分けられますが、同時に発見されることも珍しくありません
原因
発生と進行には、女性ホルモンであるエストロゲンが大きく関与しているとされています。エストロゲン分泌が多いと筋腫のサイズが増大する傾向があり、症状も現れやすくなります。
主な症状
筋腫が小さいうちにはほとんど自覚症状を起こすことはありません。そのため早期に発見されるのは、妊娠やがん検診などがきっかけになるケースが多くなっています。筋腫が大きくなると、生理時の出血量が増える、生理痛、過多月経、腹痛、腰痛、頻尿、不正出血、不妊などの症状が現れます。筋腫のある場所や大きさ、数などによって症状の内容や強さが変わってきます。
検査と診断
内診でコブ状の筋腫結束に触れて診断されることが多くなっています。他に超音波検査、CTやMRIなどの検査を行う場合もあります。
治療
治療には薬物療法と手術療法などがあります。ただし、良性腫瘍であり、サイズが大きくなるスピードも比較的遅いため、経過観察を続ける場合もあります。閉経後には筋腫を成長させる原因となるエストロゲン分泌量が低下するため、筋腫結束のサイズが小さくなることがありますし、それによって症状がなくなる可能性もあります。そのため、適切な治療を行うためには年齢なども含めた総合的な判断が重要になります。
薬物療法
排卵を促すホルモンの分泌量を低下させると同時に卵巣から出るエストロゲンを減少させるGnRHアゴニストによる薬物療法です。上位中枢(脳下垂体)に作用することで低エストロゲン状態になり、生理がなくなって筋腫の発育停止と縮小を促進します。4週間に1度の皮下注射による治療を、6ヶ月単位で行っていきます。
薬物療法は補助的な治療法であり、完全に治すことが困難です。また、生理の際の症状が重い場合には、ピル(LEP)などを併用して症状緩和を目指します。
子宮動脈塞栓術
手術以外をご希望になる際に検討される治療法です。筋腫への栄養血管である動脈を閉塞して、栄養失調になった筋腫を壊死させます。術後疼痛を鎮めます。
手術療法
基本的に「単純子宮全摘出術」を行いますが、今後の妊娠を希望されている場合には「筋腫核出術」により子宮を残して筋腫のみを摘出します。腹腔鏡下手術と開腹手術と、膣から手術することで開腹しない手術があります。筋腫が大きい場合や症状が強い場合には開腹手術が適しているとされています。手術をご希望の方は『提携医療機関』紹介状をお書きします。
子宮内膜症・子宮腺筋症
子宮内膜組織は子宮の内側にあるものですが、周辺の臓器などに子宮内膜組織が発生してしまうことがあります。子宮内膜組織が子宮筋層の中にできるのが子宮腺筋症で、それ以外の場所にできるのが子宮内膜症です。発症が多いのは30~40歳代です。
子宮内膜症の発生が多い部位には、腹膜、卵巣、子宮と直腸の間のくぼみ(ダグラス窩)、膣や外陰部、膀胱、腹膜などがあり、肺やリンパ節など子宮から遠い場所にできることもあります。
原因
子宮内膜が生理の時に卵管を通ってお腹や子宮筋層に広がって発症する、卵巣組織が変化して発症するなど、その他色んな説がありますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。なお、子宮腺筋症は長く子宮内膜症に含まれる病気と考えられてきましたが、現在は別の病気として診断されています。
主な症状
生理痛、生理時の出血量が多い、腹痛、腰痛、性交痛が主な症状です。血便や血尿などの症状を起こすケースもあります。子宮腺筋症はより強い症状が出やすい傾向があります。
検査と診断
生理痛や経血量などを問診でうかがって、子宮の大きさや卵巣の腫れの有無を内診と超音波検査で確認します。必要がある場合には、経腹超音波検査・経膣超音波検査を行います。さらにMRIなどの検査が必要になることもあります。
治療
良性疾患ですが、症状の強さや内容などによって薬物療法や手術療法を検討します。今後、妊娠を希望されるかどうかも治療内容を選択する際には重要になります。
薬物療法
痛みをコントロールする対症療法として、鎮痛剤や漢方薬を処方します。また、ホルモンをコントロールする内分泌療法には、LEP(超低用量ピル)、ディナゲスト療法、GnRHa療法、ダナゾール療法などがあります。定期的に経過を観察しながら処方を微調整して、最適な状態に近付けます。
手術療法
将来の妊娠をご希望になる場合には、子宮や卵巣を残して病創部のみを切除します。今後の妊娠を考えていない場合には、卵巣の一部を残して卵管や子宮を摘出する場合と、子宮・卵巣・卵管をすべて摘出する根治手術があります。手術内容や状態に合わせて、開腹手術、または腹腔鏡手術を行います。手術をご希望の方は『提携医療機関』紹介状をお書きします。