性感染症とは
性行為によって感染する病気の総称で、性感染症の他にSTI・性病と呼ばれることもあります。オーラルセックスやアナルセックス、キスで感染してしまうこともあります。
近年増加傾向にあって注意が必要な性感染症は、クラミジア、淋病、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、カンジダ膣炎、トリコモナス膣炎、梅毒、HIV(エイズ)などです。性感染症は特殊な病気ではなく、20~24歳の女性は16人に1人、15~19歳では21人に1人が感染しているとされているほどよくある病気です。ただし、性感染症の多くは将来の不妊や赤ちゃんへの悪影響というリスクがあります。パートナーも含めてしっかり治療を受けて完治させないと繰り返し感染してしまうことも珍しくありません。「もしかしたら」と感じたら、すぐにいらしてください。
性感染症の検査費用
性病検査一式 | 培養検査 B型肝炎 C型肝炎 梅毒 クラミジア(経腟) 淋菌(経腟) HIV |
15,000円(税込) |
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追加検査 | クラミジア(咽頭) 淋菌(咽頭) | 5,500円(税込) |
主な性感染症
クラミジア感染症
性交渉によって感染し、潜伏期間は3日~1週間です。膣から子宮内に感染することが多いのですが、オーラルセックスで咽頭(のど)への感染も起こります。
主な症状
自覚症状なく進行することも珍しくありません。粘度の高いおりもの、おりものの量が増える、下腹部の痛みや右上腹部痛、不正出血などを起こすこともあります。のどへの感染が起こった場合には、のどの炎症を起こします。
リスク
クラミジアによる炎症が続くと、卵管炎や骨盤内感染症を発症して将来の不妊や子宮外妊娠につながる可能性があります。また、感染している状態で妊娠した場合、分娩時に赤ちゃんが感染して肺炎や結膜炎を発症することもあります。
検査と治療
抗原検査で膣や子宮の粘膜内のクラミジアの有無を確認するか、採血によって血液に抗体があるかを確認します。のどへの感染を含め、クラミジア感染症は抗生剤による治療を行います。
淋病
淋菌による性感染症で、潜伏期間は2~7日です。近年、セックスだけでなくオーラルセックスやキスで感染するケースが増えており、のどへの感染が認められる症例が多くなってきています。
主な症状
男性が感染した場合には、激しい痛みを起こすなど強い症状が出て感染がわかりやすいのですが、女性が感染した場合は自覚症状がほとんど現れないこともあるため注意が必要です。女性に現れる主な症状は、黄色がかったおりもの、外陰部の腫れやかゆみです。のどに感染した場合には炎症を起こします。
リスク
自覚症状がないまま慢性化して淋菌性膣炎・子宮内膜炎・卵管炎などを起こすことがあります。こうした場合には、強い下腹部痛が起こることがあります。将来の不妊や子宮外妊娠リスクが高くなってしまうため、症状がほとんどなくてもしっかり治療を受けてください。
検査と治療
おりものを採取して淋菌の有無を確認します。抗生剤点滴による治療を行いますが、自己判断で治療を中断すると薬剤耐性を持った淋菌が現れて治療が困難になる可能性があります。医師から指示された服薬や制限をきちんと守ってしっかり治しましょう。
性器ヘルペス
性交渉によって感染する性感染症ですが、汚染されたタオルなどを介した感染を起こすこともあります。性器以外に、口や目などの粘膜にも感染することがあります。最近20歳代に感染の増加傾向があります。女性は初感染後の症状が重くなりやすいという特徴があります。治ってからもウイルスが潜伏して繰り返し症状を起こすことがよくありますが、再発の症状はそれほど強くなることはありません。
主な症状
初感染して数日から10日後に症状を起こします。皮膚の違和感、発熱、倦怠感があって、外陰部や膣に水疱ができて破れると潰瘍になります。強い痛み、鼠径部の腫れ、排尿痛などを起こし、歩行が困難になるケースもあります。再発時の症状は、かゆみや軽い痛み、違和感程度であることが多くなっています。
検査と治療
水疱や潰瘍を確認することで判断できる場合がほとんどです。また、抗原検査や血液検査で感染の有無を確認することもできます。抗ウイルス剤による治療を行います。短期間に再発を繰り返す場合には、抗ウイルス剤の治療をある程度の期間続ける場合もあります。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルスによる性感染症です。潜伏期間が3週間~8ヶ月後とかなり長く、治療で症状が消えても再発する可能性があるため、地道な治療が必要です。
主な症状
外陰部や肛門周辺に弾力性のあるイボ状のできものが生じます。進行すると小さいイボが集まって大きくなり、カリフラワーのようになってしまうこともよくあります。見た目以外の症状は乏しいのですが、かゆみやほてり、性交痛などを起こすこともあります。
検査と治療
イボの組織を採取して顕微鏡で確認して診断します。早期でまだイボが小さい場合は軟膏や凍結療法を用います。大きくなってしまった場合には、レーザーや電気メスによる切除お検討されます。
カンジダ膣炎
真菌(カビ)の1種であるカンジダ・アルビカンスによる性感染症です。カンジダは常在菌ですから通常は膣内で繁殖することはありませんが、免疫力が低下している時に発症することがあります。リスクが高いのは妊婦や、糖尿病がある・抗生剤を服用しているといった方です。また過度の洗浄で善玉菌が減少すると感染しやすくなります。
主な症状
まずかゆみが起こります。次に白っぽいカスが混じったおりものが増えて、これが外陰部に付着してただれを起こすこともあります。慢性化するとおりものが減っていきますが、かゆみや痛みは残りやすい傾向があります。
検査と治療
おりものを採取して培養検査を行って診断します。真菌感染が原因ですから抗生剤は効きません。そのため、抗真菌薬による治療を行います。症状が治まった後も菌自体がなくなるまでしっかり治療を続けることが重要です。
トリコモナス膣炎
寄生虫であるトリコモナス原虫が膣内に入って発症します。感染によって膣内の自浄作用が低下するため、他の感染症にかかりやすくなります。早期の治療が重要です。
主な症状
外陰部のかゆみがあり、黄色や緑っぽいおりものが増加します。泡立ったおりものが生じることもあります。おりものは臭いが強いことが多く、それをきっかけに受診される方も多くなっています。
リスク
進行すると尿道炎や外陰炎を起こして、排尿痛や動作による痛みを生じることがあります。男性に自覚症状が現れにくいため、男性は感染していないと誤解してパートナーの女性に繰り返し感染させてしまうことがあります。
検査と治療
おりものや尿を採取して顕微鏡検査で原虫の有無を確認します。フラジールの膣錠や内服薬の療法を使った治療により、尿路に入り込んだ原虫も駆除できます。2週間程度かかりますが、しっかり治療しましょう。
梅毒
主にセックスやキスなどによってうつる性感染症です。皮膚や粘膜に傷があると、そこからトレポネーマ感染を起こします。輸血などによって感染する可能性もあります。また、妊娠している場合には、胎盤を通じて胎児に感染して重い障害を起こす可能性があります。一時期、日本ではほとんど発症がなかったのですが、近年になって発症数が増え続けているため注意が必要な性感染症です。
主な症状
症状は時期によって大きく変わるため、4期に分けられています。
第1期
10~90日の潜伏期間で症状を現します。しこりのような初期硬結を生じて、それが潰瘍になります。痛みは少なく、潰瘍は数週間で消えてその跡がしばらく残ります。
第2期
感染して3ヶ月以上経過すると、全身に赤い特有の湿疹が生じます。髪の毛がまだらに抜ける梅毒性脱毛を起こすこともあります。ほとんどの場合、現在はこの段階までに発見されるため、第3期の症状まで進行させてしまうケースは極めてまれです。
第3期
感染して2~3年経過すると、ゴム腫という結節が筋肉や骨、内臓などできてサイズが増大していきます。
第4期
感染10年後になると心臓血管系や中枢神経系が侵されていきます。これによって大動脈中膜炎、大動脈瘤、痴呆、進行麻痺といった症状が現れはじめます。記憶障害・思考力の低下・妄想・全身麻痺などを起こし、放置していると死に至ります。
検査と治療
血液を採取して検査しますが、感染して6~8週間経過していないと正確な結果を得ることができません。そのため、再検査が必要なケースもあります。抗生剤で治療します。
HIV(エイズ)
HIVはヒト免疫不全ウイルスというウイルスの名前で、HIVがヒトの免疫細胞(Tリンパ球やマクロファージ)に感染して後天性免疫不全症候群(エイズ)を発症させます。HIVは性感染症ですが、感染すると他の感染症を発症しやすくなります。HIVに感染していて、指定されている代表的な疾患23のどれかにかかった場合にエイズと診断されます。
感染経路
性的な接触による感染、母子感染、血液感染があります。母子感染は、出産時の他に授乳でも感染します。血液感染は注射器の使いまわしなどによる感染も含まれます。
症状
HIV感染2週間程度の潜伏期間後に、発熱、倦怠感、筋肉痛、リンパ節の腫れや痛み、湿疹などの症状が現れますが、こうした症状がまったくないケースもあります。数週間でこうした症状は治まります。
無症状期
初期の症状が治まってから、数年から10年程度、症状がない期間が続きます。HIVが増殖していますが、免疫機能によって症状が抑制されています。
発症期
指定された23の疾患のどれか1つでも発症した時点で、エイズと診断されます。
検査と治療
HIV抗体スクリーニング検査を行いますが、感染後しばらくしないと正確な診断ができない場合があるため、再検査が必要になることもあります。感染した可能性のある日から3ヶ月以上経過していれば正確な検査結果を得られます。なお、HIV抗体スクリーニング検査で陽性になった場合には確認検査を行い、確認検査でも陽性になった場合にHIV感染が確定します。
完全な治癒は望めませんが、エイズの発症を長期間抑制する治療が可能になっています。抗HIV薬の正しい服用をしっかり続けて発症を抑えましょう。また、エイズ発症に至っても、以前のようにそれが死に直結しているわけではありません。治療を続けてよい状態を保っていきましょう。
性感染症を予防するために
現在、避妊方法は効果的なものが増えていますが、性感染症の予防には避妊として必要ない場合でもコンドームを正しく着用することが最も重要です。コンドームは、粘膜や体液の接触を防ぐため、感染リスクを大きく低下させますので、避妊には必要ない場合にも着用するようにしましょう。ただし、破れるといったリスクも存在します。不特定多数との性行為や、多数のパートナーがいる相手との性行為などは行わないようにしましょう。また気付かないうちに感染している場合、ご自分が大事な相手にうつしてしまう可能性もあります。
リスクの低い相手との性行為でも、シャワーや排尿排便を済ませておくなど衛生に気を付けましょう。また、生理中には性行為をしないようにしてください。なお、屋外では性感染症以外の感染リスクも高くなります。
性感染症は特殊な病気ではなく、誰もがかかる可能性のある病気ですし、早期の治療で比較的楽に治すことができます。ただし症状がない場合もパートナーに必ず受診してもらうことが再感染防止には不可欠です。しっかり治して再発させないようにしましょう。